「周りが見えないから、より綺麗に見えるよね」
下山途中、すれ違った方の言葉。
「霧で周りは見えなかったのですが、足元だけでも とても綺麗で」
と話すと、こう答えてくださいました。
その後、2時間ほど下る間に考え事。
今日は、霧が濃い日で遠望がききませんでした。
来週、天気が良い日を選んでまた登ろうと思ったので、それほど気にすることはなかったのですが
それでも初めて登った山なので、景色が見えないことを少し残念に思っていました。
けれど、見えないから感じられたこともたくさんありました。
地蔵ヶ岳が、霧と風で独特な雰囲気があり「怖いな」と思ったこと。
地蔵ヶ岳直下の蟻地獄みたいな砂山部分を、他に何も見えないから足元だけ見ながらもくもくと登ったこと。
巨岩に驚いたこと(どういう山の成り立ちだと、こういう巨岩が出来るのでしょう?
柳生の里の一刀石を思い出しました)
急坂にある、庭石のようなと白い石を何岩かな?と考えたこと。
霧の中で、気をつけて道標をみつけながら辿り、三山を巡ったこと。
もちろん、霧に霞む草や木々の紅葉の美しさ。
どれも、たくさんのものが見えないから、見えるものを静かに見られたおかげでした。
今日、登ったのは鳳凰三山
青木鉱泉からドンドコ沢ルートで・・・南精進ヶ滝・・・白糸の滝・・・五色滝・・・鳳凰小屋 ・・・地蔵岳・・・観音岳・・・薬師岳・・・中道登山道で・・・青木鉱泉 に戻る というコースです。
青木鉱泉から登ったところにある、南精進ヶ滝
北斎の浮世絵の滝のようでした。
ドンドコ沢ルートで登ると、いくつもの滝が途中に見られて飽きることがありません。
鳳凰小屋に至る河原
残念ながら、目指す山頂は見えません。
青木鉱泉を出発して3時間で地蔵ヶ岳に到着。
霧に覆われている中に浮かび上がる、たくさんのお地蔵様
風が吹きつけ寒く、あわてて服を着込みます。
8年ほど前に、こんなような日に御嶽山へ登ったことを思い出します。
同じ・・・ひえぇ~ という感じがしました。
つまり、怖い。
天候のせいだけではありません。
独特の雰囲気です。
オベリスクと呼ばれている巨岩へ近づいてみますが、
途中 お地蔵様を見つける度に手を合わせながら進みました。
ぴかーっ、と晴れていれば、ここに抱く印象はかなり違うと思います。
風と霧に、このまま鳳凰小屋へ下ることも考えましたが、様子を見ながら進んでみました。
すると、地蔵ヶ岳以外は風も強くありませんでした。
また、道標がわかりやすいので迷う心配もなく、美しい紅葉を楽しみながら歩く余裕がありました。
心配した雨も降ってきません。
砂の稜線は楽しくて、ブーン、と両手を広げて飛行機みたいに走ってみたり。
これも、ほとんど人のいない天気、見晴らしが悪いから人目を気にせずできることです。
観音岳山頂
鳳凰三山、全貌が見えないせいもあるのですが、ピークらしいピークが見つけられないまま
次々 山頂を示す柱が現れます。
行先の山を眺めながら進むのは、次回のお楽しみです。
そんなわけで、もくもくと歩いて薬師岳山頂。
青木鉱泉を出発してから4時間ちょっとで、すでに下山に入ります。
この天気だし・・・
と、思っていたら、下るにつれて悪くもない空になってきました。
里が見えています。
今夜、山に泊まれる人はいいなぁ とちょっぴり思いながら
気持ちのよい道を降りてきました。
もうすぐ青木鉱泉。
川の水量がすごいです。
来週、紅葉を見に登りたいところが またひとつ出来ました。
青木鉱泉を出発して、戻るまで6時間半
様子がわかったので、次は絵の具を持っていっても良さそうです。
帰る車の中、橋の上から振り返り・・・
山、見えてきています。
白州の方までいくと、山の上の霧や風は考えられないような
のんびりした秋の風景が広がっていました。
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